平成18年度においては、まず17年度の研究の継続検討課題であったニワトリ胚の腺性下垂体におけるコラーゲン線維網の構築について免疫組織化学的ならびに走査型電子顕微鏡による観察を行った。その結果、腺性下垂体では孵卵8日目には既にコラーゲン線維による支持構造の構築が始まっていることが確認された。隔膜を構成するコラーゲン線維網の構造はコラーゲン細線維束と細かい細線維網で構成されていた。それらが不規則に編み上げられており、発生の進行とともに密度が高くなっていった。コラーゲン線維の隔膜が発生の進行とともに増加し、細胞集団を区画していった。孵化直前には成体のものとほぼ同様の構造を完成させることが明らかとなった。 また、腺性下垂体の実質細胞がコラーゲン産生に関与するという仮説のもとに、ニワトリ胚腺性下垂体においてどの種類の細胞がコラーゲンの産生に関与しているのかを明らかにすべく、プロコラーゲン抗体を用いて胚発生過程におけるコラーゲン産生細胞の同定を試みたが、腺性下垂体の実質細胞には免疫陽性反応を検出することができなかった。この検討には市販されている2種類の抗体を使用したが、いずれの揚合も染色結果は陰性であった。このことからニワトリ胚の腺性下垂体ではコラーゲンの生産・構築にはホルモン分泌細胞あるいはその前駆細胞が直接関与していないことが推測された。 さらに、細胞接着分子のひとつであるN-カドヘリンの検出を試みたところ、胚発生20日目の胚において大部分の腺性下垂体実質細胞に陽性反応が認められ、ラットにおける細胞間結合様式と同様の性質を持つことが推測された。
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