現在では200種類以上が知られているアクアポリン(aquaporin、以下AQPとする)分子種は、生体膜を水分子が透過する通路として、1992年にその第一号が発見された。第一号の発見者であるAgre博士には、2003年のノーベル化学賞が贈られた。最近になり、我々のグループは新規AQP分子種であるAQP11を世界に先駆けて発見した。そして平成17年度に、科学研究費補助金の支援を受け、AQP11が多量体を形成して細胞内に局在することを見出した。これらの成果に基づいて、平成18年度では、AQP11の多量体形成や細胞内局在に必要なアミノ酸配列について調べた。また、AQP11ノックアウトマウスを用いて、小胞体ストレスとの関係についても検討した。 (1)AQP11の多量体形成に関わるアミノ酸 平成17年度において、AQP11が多量体を形成していること、そしてこの多量体形成にCys-101が関わっていることなどを示唆するデータを得た。平成18年度では、これらの点を確認する実験を行った。その結果、AQP11の多量体形成にCys-101が重要であるとの確信を得た。 (2)AQP11の細胞内局在に関わるアミノ酸 タグを融合させたAQP11をイメージング法により観察することによって、AQP11の細胞内局在の詳細について調べた。その結果AQP11は主として小胞体に局在すること、そして少ないながら一部は核膜および細胞膜にも局在することを観察した。次に小胞体局在に関係するアミノ酸配列について部位特異的突然変異法などの手法を用いて検討した。その結果、AQP11のC末端側に存在しているNKKEモチーフが、ER exitシグナルとして働いている可能性を見出した。確認実験などを今後行っていきたい。 (3)小胞体ストレスが生じた場合のAQP11の役割について AQP11発現量が減少したマウスを用いて、虚血再灌流による小胞体ストレスを負荷したところ、そのマウスの表現型には、変化は認められなかった。しかしながら、今回の系は、AQP11の発現を完全に抑えた系ではなかったため、小胞体ストレスが生じた場合のAQP11の役割については、今後も検討する必要がある。 以上の成果の一部は論文としてまとめ、現在投稿中である。
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