研究概要 |
本研究者は、神経回路網の変化を伴った異常可塑性を誘導することができるキンドリングモデル(てんかんモデル)マウスに着目し、一連の神経回路内において、刺激伝搬経路中に存在する複数の神経核に生じる情報の流れを物質レベルで検討し、神経可塑性の獲得過程の解明を目指すものである。本年度は、以下の2点の研究成果を報告する。 1.プローブ装着・扁桃体キンドリングマウス作成の検討。 扁桃体内への刺激電極挿入手術の際、プローブを海馬に挿入した。その際の工夫点を以下に述べる。(1)安定な刺激を誘導する事ができる有線で行い、小さいマウス脳に対応するように、従来用いていた陽極をさらに小さく改良した。(2)陰極・陽極の導線をさらに細く柔らかいステンレスに変更し、プローブ装着を可能にした。 2.マウス・ジーンチップアレイによるキンドリングマウス脳内発現プロファイリング。 本研究では、てんかん誘導に伴った脳内物質の検出方法を確立し、実際に同定することを目的としている。まず検出方法を確立するため、てんかん誘導に伴い上昇するであろう物質を推定し、その物質を検出することで、方法論を確立する必要がある。そこで、キンドリングマウスの刺激伝搬経路に沿って、発現変動を示す分子を同定し、同定分子に関連する分泌物の検出方法を確立する。てんかん発作獲得前(ステージ3)、てんかん発作獲得後(ステージ5)の大脳皮質(前脳)、視床、海馬を抽出し、それぞれのmRNAを調整後、マウス・ジーンチップアレイ(アフィメトリクス社製39,000遺伝子)を実施した。その結果、細胞外、細胞膜の分子群、代謝、核内分子群等、様々な遺伝子発現の増減が神経領域特異的に見つかってきた。さらには、幾つか脳内分子の候補となる分子も検出された。 以上本年度は、実際に脳内物質を回収する方法論の中でも基本的な部分を確立し、実際に回収する候補分子を決定した。すなわち次年度に向けた準備が終了した。
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