研究概要 |
多機能分子群であるTGF-β family分子が免疫担当細胞への分化過程で果たす役割を検討するため、研究初年度は、マウス胚性腫瘍細胞P19を用いて検討した。P19細胞は、発生初期の胚盤胞内部細胞塊に類似した性質を持つ多能性細胞である。P19細胞を血清存在下で接着培養したところ、中胚葉組織のマーカー遺伝子であるBrachyury (Bra)とgoosecoid (gsc)の発現が認められた,これらの遺伝子発現レベルは、培養120時間目まで経時的に増加したが、細胞がconfluentに達すると急減した,アフリカツメガエルの系において、BraやgscはTGF-b familyのactivinによって誘導されることが知られている.そこで、血清存在下において、activin/TGF-bのtype I receptor (ALK4/5)の阻害剤であるSB431542を添加したところ、Braとgscの遺伝子発現量は用量依存的に減少した。Braとgscの遺伝子発現が認められる条件でもactivinβ_A,βB_やTGF-β_1,-β_2,-β_3の有意な遺伝子発現は認められなかった。また、培地ならびに培養上清中のactivinとTGF-βをWestern blotで調べたが、いずれもバンドは検出できなかった。ALK4/5を介してシグナル伝達するリガンドとして、myostatinとnodalも知られているので、これらの遺伝子発現を調べたところ、myostatinの遺伝子発現は認められなかったのに対して、nodalはP19細胞がconfluentに達するまで経時的に増加し、SB431542によって用量依存的に減少し、さらにRA処理によっても減少した。Nodalのシグナル伝達にはco-receptorであるcriptoの発現が必須であるが、criptoの発現変化はnodalと一致した。
|