研究課題
ヒトに感染する、Babesia microtiを保有する地表生活性のCricetidaeやMuridaeなどの野鼠が日本国内にも生息することは知られているが、これ以外の野生動物はほとんど調査されておらず、今後ヒトに感染する新型の住血原虫が発見される可能性は高い。そこで今回は、これまで調査されなかった地上生活性の齧歯類からリスを選び、B.microti様原虫の有無を調べ、以下の成績を得た。1)北海道江別市野幌森林公園周辺で、2002年から2004年に交通事故死したキタリス(Seiurus vulgaris orientis)6匹のうち3匹からB.mieorti様原虫の18SrRNAおよびβ-tubulin遺伝子を検出した。2)それぞれの遺伝子の塩基配列を基に進化系統解析を行ったところ、これが新型原虫で、これまで報告されたどれよりも北米型B.microti (B.microti sensu strieto;ヒトのバベシア症の最も主要な病原因子)に近縁であった。3)原虫感染キタリス血液(寄生率約0.02%)をハムスター、スナネズミおよびSCLDマウスに接種して2ケ月観察したが原虫増殖は確認出来なかった。以上より、リス科(Sciuridae)動物からはじめて検出されたB.microti様原虫はB.microti sensu strietoに最も近縁でヒトへの感染の危険が高いと思われること、CricetidaeやMuridaeのB.microti様原虫と違ってこの原虫はマウスやハムスターで容易に増殖しないと思われることが明らかとなった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
J.Vet.Med.Sci. 68巻7号
ページ: 643-646