研究課題
乳牛の乳腺感染における免疫学的応答とそれに及ぼす有用な修飾物質の探索を行い以下の成績をえた。(1)S.aureus感染牛の好中球におけるサイトカインIL-1βおよびIL-8のmRNAの発現をRT-PCRで検索したところ、正常牛のそれらに比較して顕著に増加していたことを認めた。このことからIL-8の乳腺内への好中球の誘導・走化への促進作用に加えて、IL-1βの白血球機能への増強作用が示唆された。(2)S.aureus感染牛の乳汁中にMMP2および9の出現を認めたことから、感染による炎症の程度とMMP活性発現との関連が示唆された。(3)泌乳牛の好中球へのラクトフェリンの影響を0.004-0.4%濃度で刺激剤(OPZ,IgG)とともに共刺激を行なうことで活性酸素の有意な生成増強を認めたことから、乳腺の機能修飾剤の有用な候補となった。(4)乳腺内で機能する好中球について、情報伝達経路の解析から、食作用にはPKCδが関与することを明らかにした。(5)泌乳期にある乳牛の乳腺に対して、ラクトフェリンならびに有用微生物probioticsとしての乳酸桿菌(L.lactis)の乳房内注入による乳腺の応答性を乳牛10頭14分房を用いて検討した。L.lactis(死菌・生菌)の注入(10^7CFU)により、24〜36時間後に体細胞数の顕著な増加(3〜6倍)とともに指標酵素NAGase,伝導度および乳糖率に炎症に付随する変化を認めた。これらの変化は、生菌での実験でより明らかであった。注入分房が潜在性乳房炎の場合、注入により招来される変化は炎症排除および制御への興味ある効果が窺われたことから、継続して詳細を検討する意義が見い出された。
すべて 2006
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