1)特異性の高い抗エンドセリン抗体の作製と高感度迅速アッセイ系の検討 イヌET-1ペプチドのアミノ酸配列はヒトやマウスと同一であることが明らかになっている。したがって、イヌのET-1ペプチドの血中濃度の測定には、ヒトやマウスで用いられている市販のELISAキットが使用できる。しかしながら、この市販ELISAキットを用いる場合、血漿ペプチドの粗精製が必要となるため、測定にかなりの時間を有する。現在、産業総合研究所との共同研究で、特異性の高い抗体の作製とそれを用いた高感度で迅速なアッセイ系の検討を行っているが、開発が遅れているため、当初の実験計画通り本年度から実験に用いる事ができなかった。 2)心臓や肺疾患を有するイヌにおける血中ET-1濃度とその意義(昨年度からの継続) 測定は昨年と同様に、北里大学附属動物病院に心臓や肺の疾患で来院したイヌより血液を採取し行った。血中ET-1濃度に影響を与えると思われる疾患等(炎症性疾患、腫瘍性疾患、腎疾患、肝疾患等)はサンプルから除外して測定を行った。 イヌ心臓糸状虫症罹患犬のET-1血中濃度は、僧帽弁逆流、三尖弁逆流、先天性心疾患にくらべ著しく高値を示した。この結果は昨年度の結果を支持するもので、肺動脈内に寄生する虫体の血管内皮への物理的、化学的刺激がET-1産生充進に強い影響を与えている可能性が考えられた。僧帽弁逆流、三尖弁逆流、先天性心疾患では、イヌ心臓糸状虫症罹患犬に比べ低値ではあるものの健常犬より有意に高値を示した。 これらの結果より、イヌにおける血中ET-1濃度は、心臓や肺疾患の病態のマーカーとなる可能性が示された。
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