研究概要 |
乳牛における分娩性の低カルシウム(Ca)血症は、乳熱やダウナー症候群あるいは第四胃変位などの多くの周産期疾患の発症原因となっている。よって、本研究は、低Ca血症に対する新しい予防法の確立を目的として、経皮吸収の可能性を有する1,25-dihydroxyvitamin D_3[1,25(OH)_2D_3]に着目し、膣粘膜あるいは尾根部皮膚に1,25(OH)_2D_3を塗布し、1,25(OH)_2D_3の吸収動態と血中Ca濃度の推移を明らかにした。その結果は、以下のとおりである。 1.妊娠末期牛の膣内への1,25-dihydroxyvitamin D_3投与実験 妊娠末期牛を用いて、その膣内に0.125μg/kg BWの1,25(OH)_2D_3を1回投与し検討した。【材料および方法】分娩予定の乳牛20頭(3産以上)を2群(処置群;14,対照群;6)に分け、処置群には0.125μg/kg BWの1,25(OH)_2D_3を、対照群には溶媒のみを妊娠275日齢の膣内に1回投与した。投与直前および分娩後5日まで頚静脈より採血し、血漿1,25(OH)_2D_3、カルシウム(Ca)および無機リン(iP)を測定した。【結果】血漿1,25(OH)_2D_3は投与後2時間に、血漿Ca, iPは投与後12時間にそれぞれ有意に上昇した。【結論】0.125μg/kg BWの1,25(OH)_2D_3膣内1回投与で血中CaおよびiP濃度を上昇させることが可能であった。 2.若齢牛の尾根部皮膚への1,25-dihydroxyvitamin D_3投与実験 現在、試験中である。
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