研究概要 |
長野県川上村の一般レタス圃場のレタス根から高頻度に分離され、根への接種試験によりDSEであることが確認されたa型菌について、分類学的位置の検討を行った。a型菌は培地上での分生子の形成が確認されていないため、異なる圃場から分離された6菌株について、18SrDNAおよび28SrDNAのシークエンス解析を行った結果、本菌は単系統群となり、フンタマカビ菌綱に属し、ルルウォルチア目(Lulworthiales)のクレードに最も近く位置し、既報のいずれのDSEとも分類群が異なる可能性が示された。また、本菌にグループIイントロン様の塩基配列が認められた。 a型菌のレタスへの接種が宿主の生長に及ぼす影響について13菌株を用いて検討した。その結果、a型菌の感染は宿主のR/S比を小さくし、この現象には感染の量より感染の有無が大きく影響を与える可能性が示唆された。 a型菌のレタス根腐病に対する生物防除剤としての検討を室内および圃場における接種試験により検討した。室内試験において防除価60を示す菌株があった。混合接種あるいは単独接種した苗を導入した圃場試験において、a型菌接種区のDSE感染率と発病程度との間に負の傾向が見られる接種区があったが、防除効果は低かった。室内および圃場試験において、a型菌接種による地上部生重への影響および発病抑制効果は菌株により異なった。 栽培圃場におけるニホンナシ樹10本の台木根内内生糸状菌の感染調査を春および夏に2回行った。その結果、全個体においてアーバスキュラー菌根菌(AMF)の感染が確認され,それらはアラム型およびパリス型であった。DSEの感染率は、個体、季節、可給態リン酸量によりほとんど変化がなく、根内に安定的に定着していた。また、2回の調査におけるDSEの感染率(28.5%)はAMF感染率(57.5%)の約半分であったが,常に同じ植物体に感染しており,分離頻度の高い菌叢型が存在することを明らかにした。
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