研究概要 |
2004年に引き続き2007年度の川上村栽培レタスにおける内生糸状菌の調査により,内生菌の一つの菌叢型(a型菌)が栽培レタス根内に唯一優占的に存在しているDSEであることが明らかになった。本菌の感染様式について詳細に調査したところ,菌糸定着は接種1日目から観察され,5日目以降の定着率は100%,宿主皮層細胞内に形成される微小菌核は3日目から観察された.また,非病原性Fusarium oxysporumおよびレタス根腐病菌の感染に伴って形成されたパピラはa型菌の定着では観察されなかった.これらのことから,a型菌と宿主の関係は中立以上の共生であることが示唆された.本研究で明らかになったa型菌のレタスへの高い親和性は生物防除剤として有用な形質である. a型菌を導入したレタスに軟腐細菌を接種し,非病原微生物により活性化される誘導抵抗性(ISR)関連遺伝子(MAPK,PDFおよびVSP)および病原微生物により誘導される全身獲得抵抗性(SAR)関連遺伝子(PRla)の発現をRT-PCRにより解析した。DSE導入植物に軟腐病菌を接種した場合,MAPKおよびVSPの発現はDSEを導入しなかった植物に比べてはやく上昇し,72時間まで高い発現量を維持した.本系におけるPDFの発現量は軟腐病菌接種後24時間の4倍高かったが,その後低下した。PR1遺伝子はDSE接種および非接種植物間で差がなかった.したがって,DSEは誘導抵抗性を引き起こすが,全身獲得抵抗性を誘導しない可能性が示唆された。 菌根菌のリン酸蓄積様式の解明:宿主への成長促進および抵抗性付与が報告されているアーバスキュラー菌根菌ポリリン酸蓄積を凍結法により組織学的に検討し,外生菌糸及び内生菌糸において液胞内に一様型で存在していることを明らかにした.
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