研究概要 |
昨年度までの研究では、実稼働トイレから実汚水を採取して実験室レベルの浄化槽に投入していた。実汚水は日々成分が異なり、BODにばらつきが生じていた。そこで今年度は、ペプトン、酵母エキス、セルロース、NaClを成分とする人工汚水を用いた。また、浄化槽内に充填する担体として、これまでの木材チップの他にスポンジキューブを用いた。 人工汚水の初期BODは4,200mg/lであったが、有機物は木材チップ槽においては最大で700mg/lまで、スポンジキューブ槽においては1,400mg/lまで浄化された。 DGGEの泳動結果から、スポンジキューブよりも木材チップに多くのDNAバンドが見られ、その蛍光も強かった。現在、各DNAバンドを切り出してシークエンスを行っているところで、まだ少数のDNAバンドしか塩基配列が決定できていないが、木材チップ槽からは有機物の分解に関与していると思われるAcinetobacter属細菌やParacoccus alkeniferの存在が示唆された。また、スポンジキューブ槽からはDechloromonas属細菌、Chitinophaga属細菌の存在が示唆された。これらの細菌が浄化槽での有機物の分解に関わっていると考えられる。 DGGEの泳動結果から、木材チップ槽に比ベスポンジキューブ槽はほぼ全てのDNAバンドの蛍光が弱かった。この原因として浄化槽内の流下方向の変化が挙げられる。スポンジキューブ槽では浄化槽から細菌叢解析のため、担体をサンプリングする際、しばしば流下方向の変化が観察された。このことで細菌が十分に繁殖できなかったと考えられる。従って、今後、浄化槽の構造を改良する必要があると考えられる。
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