研究概要 |
近年、多くの新興感染症が問題となり、本年度、本邦においてもヒトへのノロウイルス感染、ニワトリへの高病原性トリ・インフルエンザ感染が多く報告され、話題となった。新興感染症には、Legionellaなどの病原性細菌、E型肝炎ウイルス等の病原性ウイルス、Cryptosporidiumなどの病原性原生動物など、水と係わるものが多く含まれ、上・下水の汚染が問題となっている。従来の病原性微生物とは異なるこれら病原性微生物に対する水質および汚泥等の衛生的安全性を確保する手法の確立が急務となっている。これまでに、われわれは、糞便と共に下水に放出される腸内ウイルス群が下水処理場の活性汚泥に吸着、安定化され、長期間にわたって感染性を維持すること、その吸着は非特異的で、静電相互作用が大きな役割を果たしていること,中性pHでは、共に負の電荷を持つポリオウイルスと活性汚泥の吸着には、両者の間を結ぶ塩橋となる多価陽イオンの存在重要であることを示した。 本年度は、主として活性汚泥中の主要な負電荷である微生物表層構造中のカルボン酸基について検討を加えた。昨年度に引き続き、活性汚泥構成菌である描Rhodococcus属細菌が生産するカルボン酸を含む細胞外多糖の構造決定を更に進めるとともに、これらカルボン酸基を修飾し、非特異的吸着に与える影響について検討を加えた。 また、生食用カキ由来のノロウイルス感染に代表されるように、ヒトから廃水などを経由して環境に排出された病原性微生物の海洋中での挙動、特に濾過摂食者における濃縮が問題となっているが、その詳細には不明な点が多い。代表的な濾過摂食者であるホヤとその共生細菌に着目し、海洋環境中での濾過摂食者における微生物濃縮のモデルとしての有効性を検討するために、基礎的検討を加えた。
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