研究課題/領域番号 |
17580294
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 裕子 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別教育研究助教 (00324707)
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研究分担者 |
大塚 泰介 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 学芸員 (60344347)
間藤 徹 京都大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50157393)
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キーワード | ラオス / 水田 / 生態系 / 変化 / 指標 / 藻類 / 珪藻 / アジア |
研究概要 |
本研究の目的は、伝統的な農業と新しい農業技術導入が混在するラオスの水田において、人間活動の影響によって起こる水田生態系の「変化」の指標となる藻類相の特徴を明らかにすることである。本年度は、これまでの調査で特に顕著な違いが表れた珪藻群集を中心に解析し、以下のような成果を得られた。 1.潅漑水が十分な水田では、雨季にはCaloneis minuta、 Placoneis undulata、 Sellaphora auldleekieなど一般に富栄養水域に生息する種が大きな割合を占め、乾季には、乾湿を繰り返す場所や土壌からも報告されているAchnanthidium minutissimumの割合が大きくなる傾向があった。 2.潅漑水が不十分と言われる水田地区では、雨期の湛水時でも、多くの潅漑水田では乾季に優占するAchnanthidium minutissimumが大きな割合を占め、雨季でも乾燥状態になりうることをことが推測された。乾季なると、土壌種として知られる種が優占する傾向があった。 3.雨水に頼る天水田では、雨季にはLuticola aequatrialisやPinnularia obscura、乾季の終わりにはDiadesmis contentaと、いずれも土壌に生息し、乾燥にも強いと考えられる種が優占していた。 4.村人への聞き取り調査から、潅漑ルートの変更後、糸状藻類Spirogyraの繁殖状態に変化が見られた例が多かった。 5.上記の結果から、珪藻群集、優占種を特徴づけているのは、乾燥頻度や乾燥程度という水条件の変動であると考えられた。潅漑方法は、水条件だけでなく、水田生態系における生物の生息環境に大きな影響を及ぼすことが示唆された。 これらの結果は、「生業の生態史(論集 モンスーンアジアの生態史-地域と地球をつなぐ- 1)弘文堂 平成20年4月刊行」に収録。
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