研究概要 |
申請者らは花粉アレルゲン等の植物糖蛋白質に結合する抗原性糖鎖が,T細胞の分化・生育を抑制することやTh2細胞からのIL4産生を抑制することを見出し,これら植物糖鎖がアレルギー疾患の有効な治療薬になる可能性を示している。そこで,本研究課題では,ヒト細胞性免疫系に対してより高い薬理活性を有するオリゴ糖鎖を,植物糖タンパク質あるいは細胞壁成分から網羅的に検索し,構造・機能相関を明らかにすることを目的している。平成19年度においては,ヒノキ花粉から陰イオン交換,陽イオン交換クロマト及びゲルろ過により,花粉アレルゲン(Cha o l)を精製したのち,結合する抗原性糖鎖の化学構造を明らかにした。その結果,Cha o lに結合する抗原性糖鎖は,ヒノキ花粉アレルゲン(Cry j l)同様GlcNAc2Man3XyllFuclGlcNAc2のバイアンテナ型複合糖鎖が主要構造(89%)を占めていた。しかしながら,ルイスaエピトープ(Ga1β1-3(Fucα1-4)GlcNAc)含有の糖鎖は存在せず,Cry j lには存在しないハイマンノース型糖鎖が少量存在することを明らかにした。本研究課題の遂行期間において,日本において深刻な社会現象ともなっている花粉アレルギーについて,スギ及びヒノキ花粉に存在する3種類の主要アレルゲンに結合する抗原性糖鎖の化学構造を全て明らかにすることができた。その他,19年度は,ローヤルゼリー糖タンパク質に結合する腫瘍抗原(T-抗原:Gal β1-3GalNAc)含有糖鎖が結合するタンパク質の同定と,腫瘍抗原糖鎖含有ペプチドの調製法を確立し,人工ポリマーの作成を開始した。
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