研究概要 |
天然型SLTXペプチドの生理活性を明かにする目的で、組換えペプチドの取得を目指した。低温下で組換えペプチドの発現誘導が起こるコールド・ショック系と大腸菌のシャペロニンタンパク質を共用することによって、SLTXを可溶性ペプチドとして発現させることができた。このペプチドを用いて、ショウジョウバエ・カリウムチャネルShaker, Shal, Shaw, Shab, Eagに対する阻害活性を電気生理学的な手法によって測定した。しかしながら、これらのチャネルに対してSLTXは阻害活性を示さなかった。 上記の組換えペプチド精製法を用いて変異型SLTXペプチドを大腸菌により発現させた。SLTXと相同性のあるクモ毒との比較から、SLTX1の25番目のチロシン、28番目のプロリンが特異性及び活性に大きく影響を与えることが予想された。そこでSLTX1の等電点4.5を改善する目的もあり、25番目、28番目のどちらかをアルギニンに置換した変異体を作製した。25番目のチロシンをアルギニンに置換した変異型SLTX1は、天然型と同様に菌体内で可溶化し、精製できた。ところが、28番目のプロリンをアルギニンに置換した変異型は、菌体内で不溶化した。この傾向は、SLTX2及びSLTX3の同じ部位の変異体でも観察され、全てのSLTXで保存された28番目のプロリンがSLTXペプチドの立体構造形成上、重要なことが示唆された。25番目のチロシンをアルギニンに置換した変異型SLTX1,2,3のショウジョウバエ・カリウムチャネルEagに対する阻害活性を電気生理学的な手法によって測定したが、天然型と同様に、このチャネルには阻害活性を示さなかった。 現在、ナトリウムチャネルのアッセイ系を構築中であり、今後、天然型及び変異型SLTXのナトリウムチャネルに対する阻害活性を検討したいと考えている。
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