研究課題
ソフトメタル-ハードアニオン共役不斉触媒であるフッ化銅や酢酸銅とキラルホスフィンからなる錯体を触媒として用い、ケトンとアレニックエステル、ピナコールボランの間の3成分反応である触媒的不斉還元的アルドール反応を開発した。本反応では、まずピナコールボランが銅触媒によりトランスメタル化によって活性化され水素化銅が生成し、これがレジオ選択的にアレニックエステルを共役還元することによって銅ジエノラートが生成する。続いてこのエノラートがケトンに対して不斉アルドール反応をおこなうことによって、不斉四置換炭素を有するキラルビルディングブロックが高いエナンチオ選択性で生成する。用いるキラルホスフィン配位子によってジエノラートの反応点を制御することができた点が最大の特徴であり、DTBM-SEGPHOSを用いた場合にはγ-アルドール付加体が、Taniaphos誘導体を用いた場合にはα-アルドール付加体がほぼ完全なレジオ選択性で得られた。多成分反応は様々な反応経路の可能性が考えられ、単純な反応剤から構造的に多様な生成物が合成できる点が利点である。本反応は立体化学と構造異体性を触媒的に制御した興味深い反応であると考えられる。また、ソフトメタル-ハードアニオン共役不斉触媒の概念を用いて、世界初のケトイミンに対する触媒的不斉Mannich型反応の開発をおこなった。本反応の生成物は、加水分解により容易に重要キラルビルディングブロックであるβ,β-ジ置換アミノ酸に導けた。
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