研究概要 |
脳内に存在するニコチン受容体は,記憶学習をはじめとする様々な生理機能に重要な役割を果たしており,その機能以上が様々な中枢神経系疾患に関わっていることが示唆されている.我々のこれまでの研究において,毒ガエルアルカロイドの一種である235B'が,脳内主要ニコチン受容体であるα4β2受容体を選択的かつ強力にブロックすることが明らかとなり,さらにその作用機序がチャネルの開口部を塞ぐオープンチャネルブロッカーであることが判明し,これは小児期てんかんの一種であるADNFLEの新規治療薬開発における極めて有望なリード化合物になり得ることを示した. そこで,本年度は,上記研究課題に沿った新たな脳機能改善薬を指向した合成研究を行い,毒ガエルアルカロイド類のなかでも最大のサブクラスに属する5,8位置換インドリチジン型毒ガエルアルカロイドであり,8位側鎖がブチル基となった251Nおよび221Kの最初のキラル合成を達成した.さらに,NIH, Daly博士との共同研究によって,未だその相対配置が未確定であった251Nの相対配置を天然物との比較から,明らかにした.(Heterocycles,2006,70,541-548) 一方,これまで合成した毒ガエルアルカロイドを用いたニコチン受容体抑制活性について,総括してまとめ,(有機合成化学協会誌,2006,64,49-60)来年度以降において標的とする毒ガエルアルカロイドの設定およびこれまでに開発した柔軟な合成経路を活用することにより,天然物をリード化合物とした新規誘導体ならびに類縁体合成の設計における指針を明らかにした.
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