研究概要 |
不斉リン原子を有する光学活性ホスホノ酢酸エステル(P-キラルホスホノ酢酸エステル)及び類縁体の合成開発を目的とし、酵素加水分解反応を用いる速度論的光学分割法を検討した。はじめに、DBU条件下、Z選択的HWE試薬であるビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルとアキラルアルコールの反応により、リン原子上に異なるアルコキシ基を有する様々なホスホノ酢酸エステル(ラセミ体)を良好な収率で合成した。次に、得られたホスホノ酢酸エステル(ラセミ体)の光学分割をブタ肝臓エステラーゼ(PLE)による酵素加水分解反応を用いて検討した。その結果、数種のボスホノ酢酸エステル(ラセミ体)を基質とした酵素加水分解反応において実用的なE値(〜>37)が得られ、目的とする新規P-キラルホスホノ酢酸エステルの合成が達成された。 一方、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルのリン原子上での(1R,2S,5R)-(-)-メントールによるジアステレオ選択的求核置換反応をDBU条件下に行うと、目的とするホスホノ酢酸エステルが40%のジアステレオ過剰率で得られた。本反応で得られたホスホノ酢酸エステルについても、同様の酵素加水分解反応による速度論的光学分割法により、光学的に純粋なP-キラルボスホノ酢酸エステルへと変換することに成功した。 (1R,2S,5R)-(-)-メントール由来の新規P-キラルホスホノ酢酸エステルと2-フェニル-1,3-ジオキサン-5-オンの不斉HWE反応をn-ブチルリチウム条件下に行うと、軸性キラリティーを有するα,β-不飽和エステルが96%の収率、84%のジアステレオ過剰率で得られた。現在、HWE試薬としてさらに有効なP-キラルボスホノ酢酸エステルを合成開発するため、新規化合物の設計、合成、反応を詳細に検討中である。
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