研究概要 |
不斉リン原子を有する新規光学活性ホスホノ酢酸エステル(P-キラルホスホノ酢酸エステル)とプロキラルケトンの不斉HWE反応は、ある程度のエナンチオ選択性あるいはジアステレオ選択性で進行した。そこで、本不斉HWE反応の生成物である軸性キラリティー化合物から中心性キラリティー化合物への新規不斉転位反応の開発を目指し、軸性キラリティー四置換オレフィン(α,β-不飽和エステル)の立体選択的合成、ならびにα,β-不飽和カルボン酸からβ,γ-不飽和エステルへの脱共役エステル化反応を検討した。 軸性キラリティー四置換オレフイン(α,β-不飽和エステル)の合成については、キラルあるいはアキラル2-置換-2-ホスホノ酢酸エステルとプロキラルなσ対称ケトンである各種4-置換シクロヘキサノンとの不斉HWE反応を詳細に検討した。その結果、スズ(II)トリフラート-N-エチルピペリジン条件下、安価で入手容易な不斉源であるイソマンニドのモノO-ベンジル誘導体を不斉補助基とするキラル2-メチル-2-ホスホノ酢酸エステルを用いた、4-置換シクロヘキサノンの不斉HWE反応により、目的とする軸性生キラリティー四置換オレフィンの高ジアステレオ選択的合成(〜>99% de)を達成した。 一方、α,β-不飽和カルボン酸である2-シクロヘキシリデン酢酸とイソプロパノールのエステル化反応を、4-ピロリジノピリジン存在下、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いて行うことにより、二重結合の転位したβ,γ-不飽和エステルが高選択的に得られることを明らかにした。さらに、本反応の選択性は縮合剤の化学構造に依存しており、縮合剤として1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いた場合には、α,β-不飽和エステルが高選択的に得られることを見いだした。
|