研究概要 |
1.立体選択的分子間ヒドロアシル化の開発: ロジウム錯体を用いたサリチルアルデヒドとノルボルネン類との分子間ヒドロアシル化反応を検討した。Wilkinson錯体[RhCl(PPh_3)_3]によるノルボルニレンのヒドロアシル化反応は、80℃加熱条件で定量的に進行し、exo-ヒドロアシル化体が立体選択的に得られた。また、AgClO_4を添加すると室温でも高収率で反応が進行した。これに対して、ノルボルナジエンとの反応では、K_3PO_4を添加すると反応は高収率に進行し、endo-ヒドロアシル化体が選択的に得られた。これはノルボルナジエンが二つのオレフィンを有するためロジウム金属とキレーションが可能となり、endo側で分子間ヒドロアシル化反応が進行したためと考察される。また、重水素化サリチルアルデヒドを用いることにより、上記推定反応機構が支持された。(Tetrahedron Letters, 2005) 2.不斉反応開発: 1,5-ヘキサジエンとサリチルアルデヒドの反応では、種々のキラルリガンドを検討した結果、(S)-BINAPを用いたときに最も高いエナンチオ選択性を示した。特に、ある種の添加剤を加えた場合には高収率、高エナンチオ選択的に反応が進行し、鏡像体過剰率77%eeを示した。本研究で得られた結果は、ロジウム錯体による初めての不斉分子間ヒドロアシル化反応の例として意義あるものと考える。(投稿準備中) 3.分子間ヒドロアシル化反応におけるアルデヒドの適用範囲の拡大: この分子間ヒドロアシル化反応は従来、基質のアルデヒドのオルト位にフェノール性水酸基が必須であり、一般性に問題を有していた。そこで、ロジウム錯体とキレーション可能な各種アルデヒドについて反応を検討した。2-(アルキルチオ)ベンズアルデヒドおよび2-(ジフェニルホスフィノ)ベンズアルデヒドの分子間ヒドロアシル化反応は、室温で進行し、高収率でnormal-ヒドロアシル化体を与えた。また、2-ホルミルキノリン-N-オキシドとノルボルネン類との分子間ヒドロアシル化反応も進行し、高収率にexo-ヒドロアシル化体を優先的に与えた。これは、初めて複素芳香環アルデヒドで分子間ヒドロアシル化反応が進行した例である。(投稿準備中)
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