研究概要 |
ロジウム錯体による触媒的分子間ヒドロアシル化反応を実用に供し得る素反応へと展開するためには、いくつかの改善を必要とされている現状があった。そのため、18年度では、特に以下の2項目について、重点的に研究を推進し、一定の成果を得ることができた。 1.ノルボルネン類を反応基質とする立体選択的ヒドロアシル化反応の開発: Wilkinson錯体[RhCl(PPh_3)_3]によるノルボルニレンのヒドロアシル化反応は、加熱条件で定量的に進行し、exo-ヒドロアシル化体が立体選択的に得られた。また、添加剤の効果により室温でも高収率で反応が進行することを明らかにできた。一方、ノルボルナジエンとの反応では、endo-ヒドロアシル化体が立体選択的かつ高収率で得られた。本反応の推定反応機構も提唱した(Chemical Engineering,2006)。 2.分子間ヒドロアシル化反応におけるオレフィン基質適用範囲の拡大と反応位置選択性の完全な制御: 分子間ヒドロアシル化反応における解決すべき問題点として、単純末端オレフィンへの適用とあわせて、反応の位置選択性制御があった。これらの問題解決のために検討を進め、アルケニルニトリルを基質をすると極めて温和な条件化、末端炭素にアシル化が生起したnormal-付加体を選択的かつ高収率で得ることを見出した。この発見を端緒として、さらにアセトニトリル等のニトリル化合物を添加剤として用いるだけで、単純末端オレフィンとの反応が良好に進行することを明らかにできた。本研究成果は触媒的分子間ヒドロアシル化反応研究においてブレークスルーともいえるものである(J. Org. Chem.,2007)。
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