研究概要 |
ロジウム錯体による触媒的分子間ヒドロアシル化反応を実用に供し得る素反応として開発するために、当該期間において、特に以下の2項目について、重点的に研究を推進し、一定の成果を得ることができた。 1.ノルボルネン類を反応基質とする立体選択的ヒドロアシル化反応の開発:ロジウム錯体を用いたサリチルアルデヒドとノルボルネン類との分子間ヒドロアシル化反応を検討した。Wilkinson錯体[RhCl(PPh_3)_3]によるノルボルニレンのヒドロアシル化反応は、80℃加熱条件で定量的に進行し、exo-ヒドロアシル化体が立体選択的に得られた。また、AgClO_4を添加すると室温でも高収率で反応が進行した。これに対して、ノルボルナジエンとの反応では、K_3PO_4を添加すると反応は高収率に進行し、endo-ヒドロアシル化体が選択的に得られた。これはノルボルナジエンが二つのオレフィンを有するためロジウム金属とキレーションが可能となり、endo側で分子間ヒドロアシル化反応が進行したためと考察される。また、重水素化サリチルアルデヒドを用いることにより、上記推定反応機構が支持された。(Tetrahedron Letters,2005)(Chemical Engineering,2006)。 2.分子間ヒドロアシル化反応におけるオレフィン基質適用範囲の拡大と反応位置選択性の完全な制御:分子間ヒドロアシル化反応における解決すべき問題点として、単純末端オレフィンへの適用とあわせて、反応の位置選択性制御があった。これらの問題解決のために検討を進め、アルケニルニトリルを基質をすると極めて温和な条件化、末端炭素にアシル化が生起したnormal-付加体を選択的かつ高収率で得ることを見出した。この発見を端緒として、さらにアセトニトリル等のニトリル化合物を添加剤として用いるだけで、単純末端オレフィンとの反応が良好に進行することを明らかにできた。本研究成果は触媒的分子間ヒドロアシル化反応研究においてブレークスルーともいえるものである(J.Org.Chem.,2007)。
|