研究概要 |
抗ウイルス性抗生物質ファッティビラシン(以下FVと略す)は新規な糖脂肪酸ラクトン構造を有し、抗ウイルス薬としての開発が期待されている。しかし、発酵法ではFVの単離精製が困難であり、不斉炭素原子の絶対構造は未決定である。そこで、本申請者らはFVの全合成による絶対構造決定と、構造活性相関を解明することとした。 FVを構成する糖脂肪酸フラグメントの合成:FVはC_2対称軸を有することから、糖脂肪酸モノマーの環化二量体と考えられる。そこで、先ず、FV全合成の重要中間体となるグリコシル酪酸フラグメント(1)を合成することした。具体的には、1)グルコースから誘導した種々の糖供与体として、1-OAc(2),1-Br(3),1-SEt(4)誘導体を調製した。2)D-マンニトールから誘導したグリセルアルデヒド保護体を合成し、グリニヤ反応による1炭素増炭反応を試みた。3)L-リンゴ酸を出発物質として、(S)-リンゴ酸ジメチル(5)と、4-クロロ-3-ヒドロキシ酪酸エチル(6)を高収率で得た。つぎに、上記1)で合成した糖供与体2と、2)で合成した酪酸誘導体(6)との縮合(Ag-alumillosilicate, ClCH_2CH_2Cl)により,糖脂肪酸;dimethyl2-0-(per-0-acetyl-β-D-glucopyranosyl)-L-maleate(7)を低収率(20-30%)であるが合成することが出来た。本反応により得られた糖脂肪酸(7)は、FVの全合成のための重要中間体である。現在、その生物活性を測定中である。
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