研究概要 |
抗ウイルス性抗生物質ファッティビラシン(FVと略す)は、新規な糖脂肪酸ラクトン構造を有し、新たな抗ウイルス薬としての開発が期待されている。しかし、発酵法での単離精製が困難であり、また、脂肪酸部分の不斉炭素原子の絶対配置は未決定である。本研究では、FVの全合成による絶対構造の決定と、構造活性相関を解明する。 平成17年度実績で報告したFVの構築プロック(グルコシル酪酸誘導体)は収率が低いため(20〜30%)、実用には至らなかった。そこで新たに適切なグリコシル供与体と受容体を設計し、それらのグリコシル化反応を試みた。先ず、L-リンゴ酸のカルボキシ基をエステル化したL-リンゴ酸ジエチルエステルの一方のエステルを選択的に還元し、一級ヒドロキシ基をTBS基で保護した化合物、ethyl(3S)-4-(t-butyldimethylsililoxy)-3-hydroxybutanoate(1)を受容体とし、α-D-glucopyranosyl bromide(2)を供与体としてグリコシル化の反応条件を検討した。その結果、FVの全合成にあたり必須な構築ブロックであるethyl(3S)-3-O-(2,3,4,6-tetra-O-acetyl-β-D-glucopyranosyl)butanoate(3)を得ることが出来た[Ag_2CO_3,I_2/(CH_2Cl)_2/r.t.,22h,収率64%]。次に、グリコシド(3)のアセチル基を除去し、6位にトリチル基を導入することで6-O-トリチル体(4)を収率78%で得ることが出来た。さらに、4のO-ベンジル化を経て脱トリチル化により6-OH体(5)を調製中である。また、4の加水分解により遊離カルボン酸(6)を得るための反応条件を検討している。5と6はFVの基本骨格である環状ジエステルを合成するための前駆体である。
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