研究概要 |
創薬候補としての抗ウイルス性抗生物質ファッティビラシン(FV)の構造活性相関の解明を目的として、FVの全合成研究を実施した。 先ず、申請書に述べたFVの全合成計画に従い、FVの基本骨格である環状糖脂肪酸ジエステルを合成するための重要中間体である糖脂肪酸モノマー:ethy1(3S)-3-O-(2,3,4,6-tetra-O-acety1-β-D-glucopyranosy1)butanoate(1)を合成した。更に1の脱アセチル化を経て、2級水酸基のベンジル化を試みたが反応は進行しなかった。そこで新たな糖脂肪酸モノマーとして、t-buty1(3S)-3-O-(2,3,4,6-tetra-O-acety1-β-D-glucopyranosy1)-4-pentenoate(2)を設計した。グリコシル供与体としては反応性が高いper-O-acetyl-β-D-glucopyranosyl trichloroacetimidate(3)を選んだ。受容体としては3位に不斉炭素を有するt-buty1(3R)-3-hydroxy-4-pentenoate(4)を選び、酵素法による不斉アシル化を利用して合成した。つぎに3による4のグリコシル化により、収率70%で上記中間体2を合成することができた。つぎに2の脱アセチル化→1級水酸基のアセチル化→2級水酸基のベンジル化により、3-O-ベンジル体(5)を収率51%で得た。更に5の脱アセチル基と脱t-ブチル化を経て、アグリコン部分に遊離のカルボキシル基を有する中間体6を収率56%で得た。そこで6の環化縮合を行い、目的とするFVの基本骨格である環状ジエステル(7)を収率40%で合成することが出来た。更に7へのクロスメタセシス反応により、環化体のアルキル側鎖の伸長にも成功した。今後、本反応のFV全合成への適用と生物活性試験を予定している。
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