本年度は、以下の5つの項目に従い研究を遂行した。1)抗腫瘍活性環状ヘキサデプシペプチドGE3の合成:GE3の環状ヘキサデプチペプチド部分の合成で鍵となるピペラジン酸の両鏡像異性体のリパーゼTLのリサイクル化による実用的な合成方法を確立した。更に、ピペラジン酸を中心とするトリペプチドの合成を検討した結果、一方のトリペプチドの合成に成功した。現在残りのトリペプチドの合成を検討中である。2)Perovskia abrotanoidesより水系溶媒を用いるHPLC分取により得られたジテルペン類の誘導化及び細胞毒活性評価:イセテキサン型ジテルペンであるdemethylsalvicanolを原料として、天然物grandioneの生合成指向型合成を行なった。その結果、grandioneの構造訂正を行なうことが出来、更に、grandione及びそれらのアナログに細胞毒活性を見出した。一方、アビエタン型ジテルペンであるcarnosic acidを原料としてそれらのアナログを合成、及び細胞毒活性試験を行なったところ、C環部キノン構造もしくはその等価体構造が活性発現にとって重要であることを見出した。3)水系溶媒を用いるHPLC分取により得られたent-カウレン型ジテルペン及のアナログ合成及びそれらの細胞毒活性評価:天然から多量に得られるジテルペンexcisanin Aを原料として、1、12-モノ及びジアシル化合物を合成、細胞毒活性評価の結果、これらの類縁体の細胞毒活性に関する構造活性相関を明らかにすることが出来た。4)アミノ酸の有効利用の一環として、L-serineから容易に誘導されるGarnerアルデヒドをキラルテンプレートして、生理活性プロリン誘導体を合成した。5)毒ウツギから新規セスキテルペンの単離・構造決定を行い報告した。来年度は、マイクロウェーブを積極的に利用した天然物の構造変換を検討していく予定である。
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