申請者はグリーンケミストリーを指向した有機合成を展開すべく、1)創薬シーズとなる機能性天然分子の探索、2)それらを用いたアナログ合成とそれらの構造活性相関の検討、3)酵素を利用した有機合成反応の開発及びその応用、4)金属触媒を用いる有機合成反応開発や、5)アミノ酸を用いた生理活性天然物の合成などを検討した。その結果、1)比較的栽培が容易な植物に着目、それらの素材の分離の際は、逆相カラムを用い水系溶媒を利用することを念頭に新規機能性有機天然分子の探索を行った。その結果、新規セスキ・ジテルペン数種を見いだすことが出来た。2)細胞毒活性などの生理活性を指標とし、比較的多量に得られた天然物のアナログ合成を行った。ent-カウレン型、イセテキサン型、及びアビエタン型ジテルペンについて細胞毒活性に関して構造相関を論じた。アナログ合成には、グリーンケミストリーを意識してマイクロウェーブの利用を検討し、天然物brussonolの生合成模倣型合成を実現した。更に、demethylsalvicanolを原料として酸化、固相条件下加熱することにより天然物grandioneを合成し、その報告された構造の訂正を行った。3)リパーゼTLを用いる光学分割反応をグリセロール誘導体に適用し、光学活性グリセロールの合成に成功した。一方、炭素5個の2級アルコールの光学分割反応のセミラージスケールへの適用が可能であることを示すことが出来、ピペラジン酸の多量合成への道を開いた。現在はヘキサデプシペプチドGE3の合成を検討している。4)パラジウム触媒を用いる創薬機能性分子骨格であるインドール、ピロールの簡易合成に成功した。5)安価で多量に購入できる天然資源であるアミノ酸をキラルプールとした異常アミノ酸の合成を行った。今後、グリーンケミストリーをより意識した有機合成を展開していく予定である。
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