研究概要 |
アミノ酸を保護することなく変換反応を行い、有用な生体機能物質の短行程合成を可能にする事を目的として研究を行い、本年度は以下に示す二つの成果を得た。 1.赤堀四郎等は1942年、日本化学会誌にBenzaldehyde(1)とN-Methylalanine(2)をピリジン中加熱することにより、低収率(16%)ながらEphedrine(3)が一行程で得られることを報告した(赤堀反応)。この反応は無保護アミノ酸の脱炭酸と同時のアルキル化という非常に珍しい反応形式だったばかりでなく、医薬品の基本骨格として多く含まれるアミノアルコールが一行程で得られるという合成法としての意義も大きい。我々は、この反応に注目し再検討の結果、中間体としてもう一分子のベンズアルデヒドが反応したオキサゾリジン体が大量に生成していることを見出し、アミノアルコール類の大幅な収率の向上(最高75%)に成功した。 2.我々の開発した生合成類似の経路によるトリプトファン合成法を利用して、Benz[e]tryptophanを合成した後、チオヒダントイン骨格を有するb-カルボリン誘導体へ導いた。この化合物のインドール2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害活性を測定したところ、今までに知られているIDO阻害剤の中で、最も強い活性を示した。IDOは、免疫調節機能に深く関与しており、新しい作用機序による制ガン剤、アルツハイマー治療薬などになりうるため、本年度特許出願した。
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