研究概要 |
有意義な生理活性を示す有機化合物の中には,五員環を部分構造とし,多数の官能基が複雑に組み込まれたものが数多く存在する。複数の官能基をもつシクロペンタノン環の効果的合成手法の開発は,こうした生理活性物質の重要な供給手段となる。申請者らは最近,α,β-不飽和エステルとSml_2との反応で発生するSmエノラートが分子内に存在するステルで捕捉されることを見出し,これに着目した2つの連続環化法を開発した。本研究はこれらの反応を活用する新たな展開とこれらの有する潜在能力を引き出すための新手法開発及びその新手法利用による生理活性物質の新規合成ルートの開発を目的に行われた。今回の研究の重要な成果は植物ホルモンとしてよく知られたCig-gibberellin類の新合成経路の開拓である。この合成経路では,3-methoxy-2-cyclohexenoneから10数工程で合成されケトン,エステル及びα,β-不飽和エステルを備えた基質のSmI_2による連続環化を鍵反応としており,この反応により骨格構築が極めて容易になった。また,この研究過程で新しい環組替え法が見出された。これは8-methylene-bicyclo[4.2.0]octan-2-one誘導体にSmI_2を反応させ,bicyclo[3.3.0]octan-1-ol誘導体を生成させる新しい方法である。SmI_2の誘起する連続反応を鍵ステップとする光学活性coriolinの合成に関する重要知見も得た。
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