フタロシアニンは、塗料の原材料として利用される他、光記録材料、非線形光学材料、ナノデバイスなど機能性分子材料として盛んに研究されている分子である。しかし、有機合成化学においては、酸化反応触媒として利用された例などが少数知られているだけで、これまで殆ど注目されていなかった化合物である。 本研究は、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、THFなどに溶けやすく、ヘキサンなどには不溶で、しかも、酸や塩基に対して比較的安定なことが知られるフタロシアニンを用いた多分子担持型固相担体の構築と、これを利用した新規な「固相-液相ハイブリッド合成法(液相中で反応を行い、反応の後処理は固相で行う合成法)」の開発を試みたものであり、フタロシアニンの化学に加え、これと密接に関連するポルフィリンの化学に関する事項を広範囲に検討し、以下の成果を得た。 1.金属フタロシアニンCr(TBPC)OTfを回収・再利用可能なルイス酸触媒として用いるエポキシドのアルデヒドへの位置・立体選択的転位反応を明らかにした。 2.金属ポルフィリン触媒Cr(TPP)Clを用いた脂肪族アリルビニルエーテルのZ選択的Claisen転位反応を開発した。 3.シアノエチルZnBrをシアノ源として用いるシアノポルフィリンの合成法を開発した。 4.シリルメチルリチウム反応剤を用いたポルフィリンのmeso-ホルミル化及びone-pot非対称官能基化反応を開発した。 5.官能基化された炭素鎖を持つポルフィリンの合成法を開発した。 6.対面型ポルフィリン二量体をホスト分子として用いる超分子CD励起子キラリティー法を開発した。
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