1.フィゾスチグミン類縁体の分子設計と合成 末梢神経系で強力なアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害作用を発現するフィゾスチグミンを中枢神経系で適用できる薬物の開発を目的に、フェンセリンをリード化合物としてその分子設計と合成を計画した。 まず、計画に基づき、(±)-フェンセリン類縁体の合成を行った。この合成は、連続反応を用い3a位アリル系置換基とピロロ環ユニットの導入で得られるオキシインドールに窒素上置換基を導入後、還元的環化反応によりピロロインドール骨格を構築し、最後に、カルバモイル構造を導入する方法で実施した。また、3a位アリル系置換基を足がかりにし、3a位置換基に関する多様な誘導体の合成も行った。また、活性の高いものを選び、光学活性フェンセリン類縁体を合成した。3a位酸素官能基をもつフェンセリン類縁体の合成ルート開拓としてアリンの全合成を達成した。 2.フィゾスチグミン類縁体の活性評価 合成したそれぞれの類縁体についてラット中枢型AChEおよび末梢型血清中ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)に対する阻害活性をベンゾイルコリン基質法などを用い評価した。その結果、3a位置換基の嵩が高いと中枢型AChEに対する選択性が増すが、阻害活性の低下を生じることがわかった。(-)-光学活性体の阻害活性は若干強くなる傾向が見られた。カルバモイル構造の置換基による阻害活性の選択性に大きな違いは認められなかった。これ以外の上記で合成した類縁体の活性試験を現在継続中である。 3.アマウロミンの合成ルートの開拓 アマウロミン関連化合物の一般合成ルートを検討した。上記で用いた手法を適用し得られるピロロインドールの酸化、Ugi反応によるC1ユニットとアミノ酸ユニットの同時導入、選択的エビ化によりアマウロミンの関連化合物フルクチゲニン、ベルコホルチンの最初の全合成を完成した。アマウロミン関連化合物の短工程で大量合成が可能な効率の高い方法を開発した。次のアマウロミンの構造活性探索の基盤を築くことができた。
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