phomopsidinの改良全合成ルートに基づく細胞毒性新規phomopsidin誘導体の創製を行い、シスデヒドロデカリン骨格上の三置換アルケン部位が飽和の誘導体、シクロプロパン化した誘導体、側鎖の三置換アルケン部位がシ象の誘導体、およびそれらを組み合わせた誘導体を数種類合成することに成功した。側鎖の三置換アルケン部位がシスのものは明治製菓により抗力ビ活性を示す抗生物質として報告されたMK8383であるが、その世界初の不斉全合成にも成功した。その際にFe触媒の反応によってのみ側鎖のシス型三置換アルケンの構築が可能であるという有機合成化学上興味深い知見を得た。今後、これらの微小管重合阻害活性、および抗力ビ活性について調べる予定である。タキソールA環部位とC環部位のカップリングが高立体選択的に高収率で進行することを見出し、また、シアン化物イオンの1、4-付加によりC環のトランス縮環部位を高立体選択的に合成することに成功した。さらに、連続的1、5-ヒドリドシフト、ベンジリデン形成反応によるtrans縮環部位構築法を発見し、分子内Buchwald-Hartwig-三浦カップリングによる効率的な8員環構築法の開発に成功した。引き続き新しい合成ルートでのタキソールの不斉全合成達成を目指している。FR182876の全合成研究においては、分子内Diels-Alder反応に続く分子内ヘテロDiels-Alder反応に成功し、また、分子内Heck反応によって歪みのかかったEF環部分の合成を行えることを見出した。引き続きアリルアルコールのメチルケトンへの異性化、ケトンの立体選択的還元を経てFR182877、FR182876の不斉全合成達成を目指す。
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