研究概要 |
チューブリンに作用する天然物にはその重合を阻害するものと脱重合を阻害するものがあり、結果として細胞分裂を阻害するため、細胞毒性を示す。ビンブラスチン、タキソールの誘導体は、実際に抗腫瘍性抗生物質として用いられており、エポチロンの誘導体も臨床的に有望とされている。このようにチューブリンに作用する天然物は、潜在的に抗腫瘍性医薬品のリード化合物となる可能性が高い。そこで、本研究においては構造活性相関のためのチューブリン重合阻害活性を有する(+)-phomopsidinの改良合成法の開発と、チューブリン脱重合阻害活性を有するFR182876、タキソールの不斉全合成を目指した。(+)-phomopsidinの効率的な不斉全合成ルートの開発においては、立体反転した11位C-OTIPS基をもつ13員環マクロラクトンを用いたTADA反応を経由する改良合成法の開発に成功した。FR182876の不斉全合成においては、分子内Diels-Alder反応、および分子内hetero Diels-Alder反応を活用する立体選択的なABCD環の骨格構築をもとに、分子内Heck反応により歪みのかかった七員環部分の構築に成功し、FR182876の前駆体であるFR182877の不斉全合成を達成した。タキソールの不斉全合成研究においては、2-benzyloxymethyl-2-methylcycloalkane-1,3-dioneの一般的合成法、およびそのbaker's yeastまたはCBS触媒による不斉還元が高エナンチオかつ高ジアステレオ選択的に進行することを見出した。また、アリルホスホニウム塩のS_N2'還元、およびタキソールA環、C環を有するエノン体へのシアン化物イオンの共役付加を活用し、タキソールC3位の高立体選択的構築に成功した。
|