研究概要 |
本研究は、超原子価結合を持つ有機アンチモン化合物の合成とその有機合成試薬としての活用に関するものであり、平成17年度に得られた成果を(1),(2)に分けて報告する。 1)10-Sb-4型超原子価有機Sb(III)化合物の合成とそのクロスカップリング反応:先にPd触媒下、Sb-N渡環相互作用を持つSb-アリール(1)およびSb-エチニル-1,5-アザスチボシン(2)がトランスメタル化剤として機能し、各種の有機ハロゲン化物(RCOCl, ArX)と効率的にクロスカップリング反応が進行することを見出し報告してきた。今回、本反応の簡素化、一般化、効率化を図る目的で、分子内Sb-N(sp^3),SbN(sp^2),Sb-O, Sb-S相互作用を持つトリアリールスチバン類(3)を新たに合成し、そのトランスメタル化剤としての評価を試みた。その結果、Sb-N(sp^3,sp^2)相互作用を持つものが優れていること、触媒としてリン配位子を持たないPd(dba)_2やPd(OAc)_2が良いことなどが明らかになった。現在、偽12-Sb-5型Sb化合物を合成しそのメタル化剤としての機能の解明に取り組んでいる。 2)10-Sb-4型超原子価Sb(III)化合物を利用した芳香族ニトロ化合物の還元反応:最近、芳香族ニトロ化合物に化学当量のSb-メチルスチボシン類(4)を作用させると、ニトロ基の還元が進行してアゾキシベンゼン類が得られるとともに、4はそのSb-オキシド体(5)として単離されることを見出した。今回、本反応の触媒化を試み、反応系にベンゾインを加えると系中で5から4への還元が進行して触媒量(5mol%)の4を用いるだけで、本還元が効率よく進行することを見出した。
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