Stetter反応による脂肪族系6員環形成の基質としては単純な鎖状系では起こりにくいことがわかり、6員環内に置換基を持つような基質での環化を試みたところ、マロン酸誘導体で反応が進行することが明らかとなった。そこで光学活性な環化生成物を得ることをふまえ、光学活性なアゾリウム塩を合成に繋がる。そのアゾリウム塩のデザインとしては軸不斉を有する新規なアゾリウム塩にターゲットを絞り合成を試みた。これまで軸不斉を有するアゾリウム塩は報告されていない。しかし、アゾリウム塩より求核性のカルベンを発生させるために芳香環との共鳴構造は非常に重要と考えられる。そこで軸不斉を誘起する骨格としてシンプルなビフェニル環を用い、直接アゾリウム環が導入できないか検討したところ、チアゾール誘導体はスズやボロン酸を用いることなく、Heck反応により直接チアゾール館を導入でき、ビアリール構造をもつチアゾリウム塩の簡便な合成法を確立できた。得られたチアゾリウム塩の反応性をビフェニル部分の影響、4級アルキル化に用いるハロゲン化アルキルの影響、塩基の影響などの面から調査した。その結果、ビフェニル部位の構造の影響は反応性にはあまり影響ないことが明らかとなった。一方、触媒効率を向上させるためには、新たな方法論による試みが必要であると考え、その方法としてラルオラスケミストリーに着目した。ライトフルオラス触媒とヘビーフルオラス触媒、両タイプのフルオラスチアゾリウム塩は市販のチアゾール誘導体と対応するフルオラス化合物より15〜50%の収率で合成した。そして、これらのフルオラス触媒はStetter反応において従来の触媒とほぼ同等の触媒活性を示し、ヘビーフルオラスの触媒では90%という高収率で四級炭素の構築に成功した。また、ライトフルオラス触媒ではフルオラス固相抽出法、ヘビーフルオラス触媒では液相-液相抽出法を用いることで、触媒活性を有する化合物が回収できることを明らかにした。
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