研究課題/領域番号 |
17590028
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
奥田 晴宏 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 部長 (30160807)
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研究分担者 |
福原 潔 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部第一室, 室長 (70189968)
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キーワード | N-ニトロソ化合物 / N-ニトロソフェンフルラミン / フェンフルラミン / アルキルアミン / 活性酸素 / 酸化ストレス |
研究概要 |
N-ニトロソ化合物は消化管発がん性や肝傷害性を有しているものが多い。最近では中国からダイエットを目的として輸入された未承認医薬品および健康食品に含まれていたN-ニトロソフェンフルラミン(NO-Fen)による重篤な肝障害が大きな問題となった。N-ニトロソ化合物による毒性発現機序は肝薬物代謝酵素CYPによって生成したアルキルカチオンがDNAおよびタンパクをアルキル化することによって毒性を発現する。その一方でCYPはN-ニトロソ化合物から一酸化窒素(NO)を発生させることも報告されている。本研究ではN-ニトロソ化合物の毒性発現機序を酸化ストレスとの関連において解明することを目的として、NO-FenによるDNA損傷能とその反応機構について検討を行った。 pBR322DNAを用いてNO-FenのDNAに対する損傷能について解析した。その結果、NO-Fen単独ではpBR322DNAに影響を与えないが、Cu(II)を添加すると強力なDNA切断反応が進行した。この切断反応はCu(II)存在下で進行し、他の金属では全く進行しなかった。また、同様の切断反応はフェンフルラミンでは進行しないことら、Cu(II)存在下におけるDNA切断反応はN-ニトロソ構造を有するNO-Fenに特徴的な反応であることがわかった。次にこのDNA切断反応のメカニズムについて各種阻害剤を添加して検討した。その結果、一価の銅Cu(I)のキレート剤であるバソキュプロインを添加すると切断反応は抑制された。またヒドロキシルラジカル消去剤のうち、チオウレアやアジ化ナトリウム、メチオナールはDNA切断を阻害する一方、DMSOやエタノール、およびマンニトールによる阻害効果はみられなかった。この結果よりNO-FenはCu(II)の一電子還元反応を経て酸素を還元活性化し、銅結合型の活性酸素種(Cu(I)-OOH)を発生していることが示唆された。以上、NO-Fenは従来のアルキルカチオンによるDNA傷害とともに、酸化的ストレスによる毒性も関与していることが予測された。来年度は酸化的毒性発現機構をさらに詳細に検討するとともに動物への影響についても解析を行う。
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