スフィンゴミエリンは、小胞体膜上で生合成されたセラミドを前駆体として、ゴルジ体内腔にて生合成された後、小胞輸送により形質膜外層へと輸送される。Ceramide transporter(CERT)は、セラミドを選択的に小胞体からゴルジ体へと輸送するタンパク質である。CERTはN末端にPHドメイン(CERT-PH)を、C末端にSTARTドメインを持つ。CERT-PHは、PtdIns(4)Pを特異的に認識する。PtdIns(4)Pはゴルジ体膜上に豊富に発現していることから、STARTドメインによって小胞体膜上からセラミドを引き抜いたCERTは、CERT-PHによるPtdIns(4)Pの認識によってゴルジ体膜上へと移行する。 PtdIns(4)Pおよび脂質膜との結合がCERTの細胞内セラミド輸送にどのような意義を有するのかを明らかにすることを目的として、本年度はCERT-PHのPtdIns(4)P/脂質膜認識機構をNMR法によって解析した。 CERT-PHの大腸菌発現・精製系を構築した。安定同位体標識を施したCERT-PHを調製して測定を行い、CERT-PHのNMRスペクトルを帰属した。CERT-PHは、脂質二重膜上のPtdIns(4)Pを認識することから、CERT-PH-PtdIns(4)Pの相互作用解析には、PtdIns(4)Pを組み込んだリポソームを用いた。両者の結合界面の同定に我々が開発した転移交差飽和法を適用した。ゴルジ体膜の脂質組成を模したリポソームを調製し、CERT-PHと混合して転移交差飽和実験を行った。顕著にシグナル強度が減少したアミノ酸残基をCERT-PHの立体構造モデル上にマッピングした結果、分子表面にて一つの連続した面を形成し、この部分がゴルジ体膜模倣リポソームと相互作用することが明らかとなった。
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