研究概要 |
滴定法は現在でも広く用いられている化学的分析法であるが,伝統的な手操作による滴定は煩雑で時間を要する上,多数あるいは微量の試料を取り扱うことは困難である。本研究では,研究代表者らが提案したflow ratiometryをフロー滴定へと応用した。Flow ratiometryとは別々に送液される2液をさまざまな流量比で合流し,下流で検出を行い,流量比と検出シグナルとの関係から目的とする情報を得る方法である。 まず,装置の制御から計測・解析に至るまで,測定を完全自動化するためのプログラムを自作した。これによる可変三角波制御(当量点位置を判定するために用いる)および固定三角波制御(当量点を含むごく狭い領域で被滴定液/滴定液の流量比を連続走査するために用いる)に基づき,目的とする情報(当量点)の取得に必要のない無駄な領域での走査を避け,ハイスループット化を実現した。これを酸・塩基の電位差滴定および光度滴定(要,指示薬)に応用し,1分あたり最大34滴定という前例の見られない高い滴定効率を実現した。本法は原理的には検量線を必要としない絶対分析法である。 また,電位差滴定による当量点の判定法を応用し,当量点から半当量点の位置を推定し,そこにおけるpHの測定から酸・塩基の電離定数を簡便かつ迅速に求める方法を提案した。 さらに,光度検出器および電位差検出器(金属イオンセンサー)を直列接続することにより,試料中のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを同時定量する方法を開発した。
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