研究概要 |
本基盤研究において高選択性と高感度性を兼ね備えたインドール試薬の開発に取り組んだ。研究期間内に2個のインドール環をマレイミドで連結した構造であるBisindolylmaleimide(BIM)誘導体を20種以上合成しその蛍光・化学発光を測定した。蛍光極大波長が500nm以上、ストークスシフトが200nm以上、デュアル蛍光、マルチカラー(青緑〜橙)蛍光、化学発光持続が10分間以上かつ化学発光強度の強い特性を有するBIM誘導体を見出すことができた。インドール及びスカトール(3-methylindole)の蛍光強度及び化学発光強度と比較して明らかな高感度化を達成した。また、BIM誘導体における置換基と蛍光・化学発光特性との関連を得ることができた。BIM誘導体の化学発光メカニズムの解明を目的として、3,4-Bis(3-indolyl)-1H-pyrrole-2,5-dione(1)の化学発光後の生成物のLC-ESI-MSの測定を行いBIMの化学発光はインドール環の2,3位及びマレイミド部位の二重結合の酸化によるジオキセタン分解を経由する化学発光であり少なくとも三っの化学発光が同時に進行していることを解明した。更にBIM化学発光反応を用いたクルクミン及びエピガロカテキンガレートの抗酸化評価にも取り組みクルクミンが強い一重項酸素(^1O_2)消去能があることを確認した。 本研究では分子科学計算を取り入れ化学的理論の構築にも取り組んだ。分子科学計算(Gaussian及びMolpro計算プログラム)結果から、1が励起状態でイオン化していることが予測された。本結果はアルカリ性下、1の吸収スペルトル及び蛍光強度が変化しない実験結果と符合した。また、1のHOMOがインドール環付近に局在化したπ共役である一方、LUMOはマレイミド部位の非結合型のπ共役となっていた。本実験及び分子科学計算結果から、(i)マレイミド部位のC=C結合によるπ共役の延長が長波長蛍光発光を生じさせている(ii)マレイミド部位のC=C結合のジオキセタン化学発光がBIMの強い化学発光強度を生じさせていると考えられる。
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