研究概要 |
糖鎖は核酸、タンパク質に次ぐ第3生命鎖と言われ、生体内で重要な役割を演じており、ポストゲノムを担う重要なターゲットとなっている。現在のところ、N-結合型糖鎖解析法としてはピリジルアミノ(PA)化法が最も広く用いられているが、化学的標識法であり、蛍光標識された部位の糖は、その構造を保持していない。本研究では、カビのMucor hiemalis由来の酵素Endo-β-N-acetylglucosaminidase(Endo-M)が、N-結合型糖鎖のN,N'-ジアセチルキトビオース(GlcNAc-GlcNAc)部分のグリコシド結合を加水分解すると同時にGlcNAc残基を有する受容体に転移させる酵素であることに着目し、糖鎖構造を保持したまま高感度分析が可能なN-結合型糖鎖解析法の確立を目的とした。 昨年度は、アミノ基標識化蛍光試薬とGlcNAc-Asnとの縮合反応を行い、蛍光プローブを導入した数種類の蛍光受容体を新規合成した。次いで、Disialo-Asn糖鎖を供与体とし、Endo-Mによる糖転移率を測定することにより、数種の優れた蛍光受容体等を見出した。最も転移率の高かった蛍光受容体NDA-Asn-GlcNAcとプロナーゼEで消化したオボアルブミン糖ペプチドの反応を行い、数種の糖鎖構造をUPLC-TOF-MSにより確認した。 今年度は、更に高分離、高選択的に糖鎖分析を可能とするため二次元セミミクロLC-TOF-MS(2D-LC-TOF-MS)システムの開発を試みた。開発した2D-LC-TOF-MSは一次元側の分離にAmide-80 HILICカラム、二次元側の分離にODS逆相カラム、捕集にはShim-pack IC-A3陰イオン交換トラップカラムを用い、捕集、濃縮、分離、検出をオンラインで行った。本システムの応用としてオボアルブミン糖ペプチドの混合物を使用しEndo-Mによる転移反応を行い、2D-LC-TOF-MSで分離検出を行った。その結果、オボアルブミン中の糖鎖と考えられる10種類の糖鎖をポジティブ・ネガティブ両モードで二価イオンとして検出することができた。
|