本年度は、炭素、金、白金などの電極基盤上への簡便かつ安定な酵素固定化法の確立を目的として研究を行った。一般に、酵素が電極などの基盤表面に吸着する際、ポリペプチド鎖の伸展・変性により表面失活することが多い。しかし、メチレンブルー(MB)やチオニン(TN)などのカチオン性有機色素と各種酵素をその混合水溶液から電極上に同時吸着させると、酵素の吸着失活が抑制され、長期間にわたり活性を保持した安定な固定化酵素系を構築できることを明らかにした。 1)チロシナーゼ(TYR)をMBとの混合水溶液から、グラッシーカーボン、プラスチックフォームカーボン、金、白金電極等に吸着固定化すると、TYRの吸着失活が抑制され、安定かつ高感度なバイオセンサが構築できることを明らかにした。本センサは、nM〜μMレベルのカテコール、およびフェノール化合物を高感度に計測できた。円二色性スペクトル(CD)測定により、MBとTYRとの特異的な相互作用によりTYRの立体構造が著しく変化することが明らかとなった。 2)炭素繊維の集積体であるカーボンフエルト(CF)に、チオニン(TN)と西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を同時に吸着固定化し、これをフロースルー型電気化学検出器とする過酸化水素計測用フロー型バイオセンサを構築した。さらにグルコースオキシダーゼ、ウリカーゼ固定化CFリアクターを上流側に導入することにより、グルコース(0.1mM〜10mM)および尿酸(0.1μM〜100μM)の連続分析力句能なフローバイオセンサシステムの構築に成功した。
|