平成19年度は、前年度までに確立した変異型酵素を用いるグルコース、乳酸、尿酸、グルタミン酸、カテコールアミン測定用電気化学式バイオセンサを同一チップ上に集積したフロー型マルチバイオチップを構築し、複数成分の同時検出および多点同時検出ができるフロー型マルチバイオセンシングシステムを確立することを目的として以下の研究を行った。 1)耐熱性ウリカーゼ(UOx、耐熱性)およびペルオキシダーゼ(HRP)固定化カーボンフェルト(CF)を組み合わせた尿酸センサ UOx反応で生じる過酸化水素をHRPの触媒還元反応により検出するフロー型センサにより、0.1μMから100μMまでの広い濃度領域の尿酸を連続的に検出することが可能であった。500倍から1000倍に希釈したヒト尿中の尿酸を精度・確度良く検出することに成功した。センサの分析結果は、市販の測定キットによる結果と良好な相関性を示した。本センザは1ヶ月間連続使用しても、感度・測定濃度領域がほとんど変化しないことを明らかにした。 2)耐熱性グルタミン酸オキシダーゼ(GLOx)とDNA-銅錯体を組み合わせたグルタミンセンサ GLOx反応で生じる過酸化水素をDNA-Cu錯体の電解触媒還元反応により検出する独自の方法により、0.1μM〜50μMまでのグルタミン酸の高感度定量が可能であった。本センサは、DNA-ポリアミン膜の選択透過性により生体試料中に存在するアスコルビン酸等の妨害を受けないため、脳脊髄液など各種体液の分析にも十分適用可能である。 今回、耐熱性グルコースオキシダーゼおよび乳酸オキシダーゼの大量発現には至らなかったが、今後、リアクター部分の酵素を各種耐熱性酵素に置き換えることにより、グルコース、乳酸、グルタミン酸等を同時に計測できるマルチサンプルセンシング・マルチポイントセンシングへの展開も可能であると期待される。
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