研究概要 |
1)慢性的酸化ストレスモデルとしてSe-欠乏餌で飼育した8週齢ウイスター雄性ラットを作成した。鉄の蓄積と脂質酸化を含む酸化的傷害は肝臓中のグルタチオンペルオキシダーゼの不足で説明される。Se-欠乏由来の酸化ストレスは肝臓中での鉄の増加を惹き起したが、Se欠乏ラットの胆汁中の鉄はコントロールラットとほぼ同じである。胆汁中への鉄の一定の排泄は肝臓中での鉄の蓄積を示唆する。胆汁脂質の主要な成分である阻汁酸、リン脂質、コレステロールにはSe欠乏群とコントロール群での違いは認められなかった。これらの傾向は、血漿中の成分にも影響を与えている。活性酸素種を補足するために、コントロール群と比べると胆汁と血漿中のビリルビン濃度だけはSe欠乏群で減少した。ビリルビン濃度測定は補助的な酸化ストレスマーカーとしての可能性が示唆することができた。 2)ウイスター系雄性8週齢のSe欠乏ラット(SeD)、正常餌により飼育したラット(Norma1)、およびSe-コントロールラット(SeC)(Seとして2ppmを含むMilli-Q処理水を飲料水として飼育)モデルラットとしてマルチトレーサー(MT)法を用いてSe,Sr,As,Mn,Co,V,Fe,andZnの胆汁排泄を比較検討した。その結果、Mn,AsはSe濃度に依存して胆汁排泄が大きくなった。V,CoはSe濃度により幾分、大きくなるがSeの効果は少なかった。しかし、内因性のFe,Znは放射化分析法で測定されるものの、外因性の放射性のFe-59,Zn-65は投与後少なくとも2時間以内は検出されなかった。Se欠乏と体内で産生されるグルタチオン(GSH)量、GSHに依存する金属イオンの錯形成、メチル化、またメタロチオネインなどと関連づけて各微量元素の胆汁排泄を説明することができた。
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