研究課題/領域番号 |
17590046
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
池川 繁男 近畿大学, 薬学部, 教授 (90111301)
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研究分担者 |
三田村 邦子 近畿大学, 薬学部, 講師 (70242526)
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キーワード | 胆汁酸 / LC / MS / グルタチオン抱合体 / アシルアデニレート / CoAチオエステル / タンパク質 / リトコール酸 / ラット |
研究概要 |
胆汁うっ滞や大腸癌はじめとする各種疾患の病因・病態を解明する上で、胆汁酸の活性代謝物による異常タンパク質の生成と毒性発現との関連のみならず、グルタチオン(GSH)抱合による解毒排泄機構を明らかにすることが強く求められている。そこで、前年度の研究成果を基に、以下の検討を行った。 まず、ESI-MSによるGSH抱合型胆汁酸の高感度測定法の開発を目指し、ヒト主要胆汁酸5種のGSH抱合体標品を合成するとともに、これらの正及び負イオン検出CIDスペクトルにおける特徴的イオンの生成に吟味を加えた。その結果、いずれの抱合体もグリシンやグルタミン酸部が脱離したイオンとともに、これらより水1〜4分子が脱離した数多くの構造上の特徴をよく反映するイオンを生成し、本法がGSH抱合型胆汁酸の高感度分析に有用なことが判った。そこで、コール酸(CA)のCoAチオエステル(CA-CoA)とアシルアデニレート(CA-AMP)をGSHとリン酸緩衝液中37℃で1時間インキュベートし生成物をLC/ESI-MS^2分析に付し、いずれの基質からもグルタチオン抱合体に変換されるばかりか、本反応がグルタチオン-S-トランスフェラーゼによって触媒されることを明らかにした。一方、GSH抱合型胆汁酸を解析する上に、本抱合体のin vivo生成を明らかにすることが重要となる。そこで、肝機能改善薬として賞用されるウルソデオキシコール酸をラットに投与し、LC/ESI-MS^2を用いて胆汁中GSH抱合体の存在を実証し、胆汁酸代謝に新たな知見を加えることができた。また、これらの実績と経験を基に肝毒性や大腸癌発症のプロモーターとして知られるLCAを不溶性担体に固定化して用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、LCAに親和性を持つラット肝細胞内の疾患関連タンパク質の捕捉と構造解析を試み、LCAに親和性を持つ各種酵素タンパク質の存在を明らかにし、LCAの肝毒性を考える上で極めて興味ある新たな知見を得た。現在、GSH抱合体のメルカプツール酸への新たな代謝経路の存在に検討を加えており、これらの研究成果は、各種疾患の病因・病態を解明する上で大きく役立つものと期待される。
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