細胞外マトリックス(ECM)であるテネイシンX(TNX)の生体内機能として、コラーゲン線維形成への関与が提唱されている。本研究では、TNXに結合している糖鎖のコラーゲン線維形成に及ぼす機能について検討した。まず、TNXの精製を、マウス血清及び各臓器よりおこない、その糖鎖の分析を行った。 精製した血清型TNXおよび間質型TNXの糖鎖の有無を、過ヨウ素酸を用いた検出反応により調べた。その結果、両者ともに糖鎖の付加を受けていることが明らかとなった。次に、両者の糖鎖構造の違いを、各種レクチンを用いたブロット解析により調べた。その結果、数種のレクチンにおいて各臓器由来の間質型および血清型TNXの反応性に相違が見られた。脾臓由来のTNXには、N型糖鎖のみの付加だが、腎臓及び肝臓由来のTNXには、N型糖鎖のみならずO型糖鎖の付加も見られた。また血清TNXは、複合型タイプのN型糖鎖のみ持つことが明らかとなった。また、α2-6結合によるシアル酸の付加が血清型およびすべての間質型TNXの末端のGalに見られ、一方糖鎖の根幹部に位置する5糖構造へのフコースの付加は、間質型TNXのみに見られた。さらには、脾臓TNXのトリプシンやI型コラーゲナーゼによる消化実験により、TNXに存在する6つのN型糖鎖付加推定部位のうち、ヘプタッド領域に存在するAsn29には糖鎖の付加は無く、またAsn3465の部位には、末端にN-アセチルグルコサミン残基を持つWGAレクチン反応性のある糖鎖の付加が明らかとなった。興味深いことに、血清型TNXはこのAsn3465部位を持つにも関わらず、WGAレクチン反応性を持たないことが明らかとなった。 現在、未変性条件下でのN-グリコシダーゼF、O-グリコシダーゼによる糖鎖除去条件を検討しているところで、条件が定まりしだい、TNXの糖鎖のコラーゲン線維形成に及ぼす影響を調べる予定である。
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