研究概要 |
我々は、細胞外マトリックスでテネイシンファミリーに属するテネイシンX(TNX)を同定して以来、その生体内での機能解明を目指し研究を行ってきた。これまでの解析により、TNXは脳以外の全ての組織の間質に存在し、コラーゲン線維形成の制御に関与することを明らかにした。本研究補助金の支援により、我々はTNXが組織の間質のみならず、血清中にも多く存在することを明らかにした(Matsumoto et al.,2006)。血清型TNX(sTNX)は、プロテアーゼによる、細胞間に存在する分子量約450kDaの間質TNX(iTNX)の切断により生じ、sTNXはiTNXのC末端領域、約200kDaを持つことを明らかにした。現在、組み換え体sTNXを培養細胞に大量に発現させ、sTNXを精製し機能の同定を進めている。また同時に、sTNXの生成に関与しているプロテアーゼの同定を、切断点を含む組み換え体タンパク質を作成し進めている。 また、生体よりアフィニティークロマトグラフィーにより容易にiTNXを精製できる方法を開発した。得られたiTNXを用いて、その生物活性を明らかにした。iTNXの細胞接着活性を調べたところ、L細胞に対して接着活性を全く示さないことが明らかとなった。また、iTNX上の細胞においては、強い接着活性を持つフィブロネクチン(FN)やI型コラーゲン(Col I)への細胞接着時に見られる、細胞内のアクチンストレスファイバーや接着班を、観察することができなかった。さらに、iTNXのコーティングにより、細胞接着によるシグナルにより活性化(リン酸化)されるfocal adhesion kinase(FAK)のリン酸化は、殆ど起こらなかった。このことより、iTNXは、テネイシンファミリーに属する他のメンバーであるテネイシンCと同様に、L細胞に対しては、接着活性を有しないことが、明らかとなった。
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