研究課題
基盤研究(C)
本研究では、細胞外マトリックス。テネイシンX(TNX)の総合的機能解析を目指し、その中でも特に、コラーゲン線維形成への役割をより調べるために、まずマウス臓器よりTNXを簡便に精製する系を構築した。その過程で我々は、TNXが臓器以外の血清中にも、多く存在することを明らかにした。血清型TNX(sTNX)は、プロテアーゼにより、細胞間に存在する間質TNX(iTNX)の切断により生じ、sTNXはiTNXのC末端領域、約200kDaを特つことが明らかとなった。精製TNXを用いて、コラーゲン線維形成を検討したところ、肝臓、腎臓、肺臓由来のどのTNXにおいても、コラーゲン線維形成を亢進させることが明らかとなった。さらに、レクチン・ブロット解析法により、TNXに結合している糖鎖構造の、臓器間での差異を明らかにした。また、精製したTNXを用いてその生物活性を明らかにした。TNXの細胞接着活性を検討したところ、L細胞、MCF7細胞、H1299細胞に対して細胞接着活性を殆ど示さないことが明らかとなった。また、TNXをコートしたディッシュ上に培養した細胞においては、強い接着活性を特つフィブロネクチン(FN)やI型コラーゲン(Col I)上での細胞接着時に見られる、細胞内のアクチンストレスファイバーや接着班を、観察することはできなかった。さらに、TNXのコーティングにより、細胞接着によるシグナルにより活性化されるfocal adhesion kinase(FAK)のリン酸化は、殆ど起こらなかった。このことより、TNXは、テネイシンファミリーに属する他のメンバーであるテネイシンCと同様に、細胞に対して殆ど接着活性を有しないことが明らかとなった。
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