[1]細胞膜蛋白質cDNA入手-ヒト及びマウスのゲノム情報からG-タンパク質共役型受容体遺伝子の塩基配列を獲得し、理化学研究所、国立遺伝学研究所、FLJクローン(NEDO)の中から迅速に完全長cDNAクローンを入手した。[2]融合蛋白質作成-次に発現用受容体-蛍光蛋白質と受容体-発光蛋白質の作成した。塩基配列を確認し作成した発現用コンストラクトが受容体として機能することは、受容体の内在化や細胞内メッセンジャーの変化により確認した。[3]発現量の滴定-蛍光蛋白質が過剰に存在する場合擬陽性率が高くなるため、適当な発現量が得られるよう発現実験に用いるDNA量を決定した。蛍光蛋白質から得られる蛍光について蛍光異方性を計測し、光共鳴エネルギー移動と配向性の変化の関係を確かめることにより擬陽性や見落としを最小限にしたアッセイ系を確立した。また、ポジティブコントロールとなる受容体ホモオリゴマー形成の有無を確かめた。受容体の中にはこのホモオリゴマー形成がBRETで検出できないものがあることが判明し、その場合免疫沈降法による評価のみ行う方針とした。[4]G蛋白質共役型受容体の相互作用検出-アゴニストに依存的な受容体機能とホモダーマー形成が確認された受容体はヘテロダイマーの形成についてBRETと免疫沈降法により総当たりにてスクリーニングした。[5]個体レベルでの解析-細胞レベルで見いだした受容体相互作用を、ノックアウトマウスを用いた個体レベルの解析に発展させ、あるいは相互作用する片方あるいは両方の受容体を欠失させたダブルノックアウトマウスを用いた解析を行った。これよりα1B及びα1Dアドレナリン受容体は平滑筋細胞のカルシウムオシレーションと末梢血管抵抗に必須であること、V1aとV1bバゾプレッシン受容体は共に下垂体-副腎機能、中枢機能において機能的に相互作用があることが初めて示された。 以上の如く、本研究により確立した手法は網羅的な細胞膜受容体相互作用解析を行うにあたり分子間相互作用から個体レベルに至るまで機能解析を行う際の基盤技術として有用性が高く、今後の大規模解析に応用可能であることが示された。
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