色素性乾皮症バリアント(XPV)群の責任遺伝子産物であるDNAポリメラーゼηを制御する機構解明へ向けて、本年度は、タンパク質間の相互作用について重要な知見を得た。まず、DNAポリメラーゼηと同じくYファミリーに属し、誤りがちな損傷乗り越え複製に関与すると考えられているRev1タンパク質との細胞内での相互作用について詳細な解析を行い、両者の相互作用が紫外線損傷部位へのRev1タンパク質の集積に重要であることを明らかにした。これと平行して、エピトープタグとの融合タンパク質としてDNAポリメラーゼηをヒトHeLa細胞内で発現し、タグを利用してタンパク質複合体を精製してその成分を質量分析により同定することにより、DNAポリメラーゼηと相互作用するタンパク質の網羅的な解析に着手した。この方法により、複数の候補タンパク質を検出したが、特に、Rad18とRad6が細胞内でDNAポリメラーゼηと相互作用していることを明らかにした。Rad18-Rad6複合体は、ユビキチン結合酵素であり、DNA複製ポリメラーゼのスライディングクランプであるPCNAのモノユビキチン化を担うことにより、損傷乗り越え複製を制御すると考えられている。さらに、これらのタンパク質とDNAポリメラーゼηとの相互作用について、細胞分画法と免疫沈降法を組み合わせた手法により詳細に解析した結果、紫外線照射後の細胞のクロマチン上でDNAポリメラーゼηとRev1とRad18-Rad6を含む複合体の形成が促進されることを見出した。これらの知見は、損傷乗り越え複製における複製複合体と損傷乗り越え因子間および損傷乗り越え因子間のスィッチングの制御機構に関わるものと考えられ、次年度の継続的な解析の発展によりさらに重要な知見が得られることが期待される。
|