色素性乾皮症バリアント(XPV)群の責任遺伝子産物であるDNAポリメラーゼηは、主要な紫外線損傷であるシクロブタン型ピリミジンニ量体を鋳型として正確なDNA合成を行うことにより、紫外線損傷によるDNA複製の阻害を回避し、また、突然変異の誘発を防いでいる。しかし、DNAポリメラーゼη自身のDNA合成能は極めて忠実度の低いものであり、適時適所でのみ限定的に機能すべく制御される必要がある。その制御機構を解明すべく、本課題においては、まず、DNAポリメラーゼηと相互作用するタンパク質の解析を行った。その結果、DNAポリメラーゼηは、Rev1およびRad6/Rad18と相互作用することを複数の手法により明らかにした。Rev1との相互作用は、Rev1を損傷DNA部位へロードするために重要であるが、DNAポリメラーゼηの機能の制御という観点からは、その重要性は見出されなかった.Rev1は他の複数の損傷乗り越えDNAポリメラーゼと相互作用することから、DNAポリメラーゼηによっては乗り越えることの出来ない種類の損傷に対して、他のDNAポリメラーゼをロードする過程に寄与する可能性が考えられる。一方、DNAポリメラーゼηとRad6/Rad18との相互作用は、細胞に紫外線を照射した後のクロマチンDNA上で促進され、その細胞内動態に重要と考えられる。Rad6/Rad18はPCNAをモノユビキチン化するE2/E3であり、PCNAのモノユビキチン化を介して、DNAポリメラーゼηを制御していると考えられる。その制御機構の解明を目指し、試験管内でRad6/Rad18によりPCNAをモノユビキチン化する反応系を構築した。本研究成果により、損傷乗り越え複製制御機構解明のための端緒が構築されたと考えられる。
|